レポート「里山ホームステイ 2025」

REPORT vol.29

レポート「里山ホームステイ 2025」

開催日 : 2025年5月3日(日)ー5日(月・祝)

対象年齢 : 6~12歳

ナビゲーター : Yae

場所 : 鴨川自然王国(千葉県鴨川市)

[ NATURE, CULTURE ]

田んぼと歌と生命のいぶき──子どもたちの感性が芽吹いた里山の3日間

ひとつの出会いが、心に根を張る。

今年のゴールデンウィーク、「里山ホームステイ2025」には、3人の子どもたちが参加しました。

舞台は、千葉・「鴨川自然王国」。
新緑がきらめき、鳥の声と風の音がさざめく里山の3日間は
子どもたちの身体と感性、そして“心”を静かに耕してくれました。

少人数だからこそ味わえた、一人ひとりに深く寄り添う体験。
自然と人のぬくもりに包まれて、こどもたちは少しずつ
自分の殻をやさしく破っていきました。

Photo : Kaito Chiba(5/5)
※このレポート内の写真は、最終日にプロカメラマンが撮影したものおよび、1日目・2日目にスタッフが撮影したものを使用しています。

土と風と、竹と歌と

はじめの2日間は、歌手のYaeさんとこどもたちだけの“里山暮らし”。
竹林に入り、音を立てて倒れる大きな筍に歓声をあげたり
焚き火で料理をしたり──。
Yaeさんと歌を口ずさみながら過ごした時間は、まるで絵本の中のワンシーンのようでした。

摘んだばかりの野草(いのこずち、からむし、くわのは…)は、天ぷらにしてペロリと完食。
畑で採れた野菜と自分でこねたうどんは、ほうとうに。
「自分で作るって、おいしいね」と笑う顔が印象的でした。

そして、裸足で入った田んぼでの泥遊び。
「ぬるぬるする!」「冷たい!」と言っていたこどもたちも、いつの間にか泥まみれで大はしゃぎ。
土の匂いと田んぼの感触──初めて触れる自然に、全身が喜んでいるようでした。

何よりも子どもたちの心が揺れ動いたのは、Yaeさんの歌声。
「もう一回歌って!」「教えて!」と心からのリクエストに
Yaeさんも微笑みながら応えてくれて。
子どもたちとYaeさんがひとつになった瞬間が何度もありました。

「あそこにある大きなみかん、獲っていいですか?」

村のおじさんにそう声をかけたこどもたちは、うれしそうに夏みかんをもぎました。
がんばって手を伸ばして、やっとの思いでつかんだひとつ。
「ここに住めたらいいのに」と誰かが言うと、おじさんがにこにこと「いつでもおいで」と。
甘酸っぱくて、ほんの少しだけほろ苦い夏みかんの味。
あのときの空気と一緒に、きっと心の奥に残っていくはずです。

夜の里山を歩く──それだけで、ちょっとした冒険

月明かりだけをたよりに、ドキドキしながら進むこどもたち。
「きゃー!」「まってー!」と声をあげながらも、笑顔がはじけます。
やがて、聞いたことのないような大音量のカエルの大合唱に、みんなで思わず立ち止まりました。
自分たちの声がかき消されるほどの鳴き声に、「すごい…」と小さなため息。
少し曇っていて、星はあまり見えなかったけれど──
それでも、こどもたちの心には、きっと光る星がひとつ、またひとつ灯っていたはずです。

焚き火とシャンソンの夜

2日目の夜には、スペシャルゲスト──Yaeさんのお母様であり、日本を代表するシャンソン歌手、加藤登紀子さんが合流。

こどもたちが自分で作った竹皿には、集落で獲れた猪のジビエカレー。
焚き火のぬくもりとスパイスの香りが立ち上るなか、加藤さんは、火の起こし方をそっと教えてくれました。

「薪は、おうちを建てるみたいに組むといいの。いい火は、急がない火よ。」

ゆっくりと火を見守る時間。
その静けさの中で、加藤さんの歌声がそっと流れ出します。
こどもたちの心を包むような歌声が、里山の夜にやさしく溶けていきました。

この日は、こどもたちも心から満たされた様子で、布団に入るとすぐに夢の中へ──。

家族と囲む、里山の恵み

最終日は、保護者の皆さんが合流。
こどもたちは、収穫した野菜や筍をピザの具材にして、手づくりの石窯でじっくり焼き上げました。

焼き上がったピザは、どれも“子どもたちのアート”のよう。もちろんお味も格別です!
3家族が一緒になって囲む食卓には、言葉にできない温かさがありました。

その後は、緑のステージで再び登場した加藤登紀子さんの生歌。
「紅の豚」のジーナの声としても知られるその歌声は、初夏の風にのって心にすっと沁み渡り、
CDやスマホでは決して味わえない“本物”の体験となりました。

加藤さんの歌を聴きながら涙する母親に
「すぐ泣くんだからー」と照れくさそうに声をかける子ども。
素直に感動できるその姿は、子どもの心に”やさしさ”の種をまいていくことでしょう。

クライマックスは、泥の中へもう一歩──田植え

そして最後は、みんなで田植え。

冷たい泥に裸足で入った瞬間、こどもも大人も一斉に「うわぁ!」と声を上げますが、不思議とすぐに笑顔に。
手と手を取り合って苗を植えるうちに、心までひとつになっていくのがわかります。

完成した田んぼには、こどもたちが自分たちでつけた名前「田んぼフィールド」の看板を。
泥の感触も、笑い声も、記念撮影の笑顔も、すべてがこの体験の“証”になりました。

少人数だからこそ、見える心の変化

最初はちょっと緊張気味だったこどもたち。
けれど3日目には、草花の名前を教えてくれたり、他の子の手を引いて田んぼに入ったり。
ほんの数日間でも、自然の中で過ごすことで
子どもたちの中に眠っていた“生きる力”が芽吹いていくのを、私たちは確かに感じました。

今回、私たちが改めて感じたのは、こどもたちの“いのち”へのまなざしの深さです。
村に暮らす猫たちにそっと近づき、やさしく声をかける姿。
田んぼの水の中を泳ぐたくさんのおたまじゃくしや、すばしっこく動くアメンボに
「きゃっ〜!」と驚きながらも、しっかりと目を離さない姿。
初めは戸惑いながらも、触れて、観察して、ちゃんと受け入れていく。
網を手にして夢中で虫を追いかけていた子の横顔には、まるで研究者のような真剣さがありました。
生きものと向き合うその時間は、こどもたちの好奇心と“やさしさ”を、静かに育ててくれていたように思います。


また、ここで会いましょう

「また来たいね!」
「今度は、あの子も連れてきたい」

こどもたちも、保護者の皆さんも、笑顔でそう言って帰っていきました。

自然は、こどもたちを信じています。
そして、SAYEGUSA &EXPERIENCEは、こどもたちの感性と成長を心から信じています。

今回、参加できなかったみなさんへ──
このレポートを読んで、少しでも「来年は行ってみたいな」と思ってくださったなら、ぜひまた、ここで。
土と風と歌の中で、お会いしましょう。