
REPORT vol.43
開催日 : 2026年08月25日(火)-26日(水)
対象年齢 : 5歳〜12歳
場所 : 鴨川シーワールド(安房鴨川市)
[ ART ]
2026年8月25日(火)から26日(水)にかけて、鴨川シーワールドにて、SAYEGUSA &Eプログラム「水族館でオールナイト」を開催しました。
参加したのは、5歳から11歳までの子どもたちと、そのご家族が、閉館後の水族館を歩き、生きものたちのすぐそばでその姿を見つめ、大きな水槽の前で夜を過ごしました。
夕方から翌朝まで、いつもの水族館よりもずっと長い時間をそこで過ごすことで、子どもたちの「見る」は、少しずつ変わっていきました。
最初は「大きなシャチ」「かわいいベルーガ」「きれいな魚」だった生きものたち。
触れて、話を聞いて、夜の姿を見て、不思議に思い、もう一度見てみる。その繰り返しの中で、水槽の向こうにいる一頭、一匹が、それぞれの時間を生きている存在として見えてきます。
Photo : Kaito Chiba
Special Thanks :鴨川シーワールド
普段は入ることのできないバックヤード。
水槽の水をきれいに保つろ過の仕組みをはじめ、生きものたちが暮らす環境を支える設備や、水槽にデビューする前の生き物たちをお世話するエリアなどを見せていただきました。
いつも何気なく眺めている水槽の向こうには、毎日、生きものたちの状態を見守る人たちの仕事があります。
表から見ているだけでは気づかなかった水族館のもう一つの姿。
「生きものを見る」ことと同時に、「その命を支えているもの」へと視野が広がっていきます。
そして、ベルーガとの出会い。
目の前に現れた大きな白い身体に、そっと手を伸ばします。
つるつるなのか。
ふわふわなのか。
硬いのか、柔らかいのか。
見ているだけではわからないことが、手のひらから一気に伝わってきます。
後日、あるお子さまは、
「ベルーガって頭がぷにぷにしてたねぇ、おじいさんになったらシワシワになるのは人間と同じだね」
と話していたそうです。
知識として覚えたことと、自分の手で感じたことが、その子なりの発見としてつながっていました。
シャチが興味津々で覗きに来てくれたディナータイムを楽しんだあとは、ナイトアドベンチャーへ。
昼間のにぎわいが消えた館内には、水の音や、生きものたちの気配が浮かび上がってきます。
昼と同じように動いているもの。
ゆっくり水中に浮かんでいるもの。
仲間同士で集まってじっとしているもの。
こんな時間になんだろう?と、こちらを観察してくるもの。
「イルカも寝るのかな」
「夜のペンギンは何をしているのだろう」
暗い水槽をのぞき込みながら、子どもたちの中に、次々と小さな疑問が生まれていきます。
昼とは違う時間の中に身を置いたことで、生きものにも私たちとは異なる一日のリズムがあることを、実感として受け取っていきます。
夜の水槽前で設けたQ&Aでは、子どもたちの手が次々と上がりました。
「魚やサメはどうやって寝てるの?」
「大きな魚は、小さな魚を食べたりしないの?」
「シャチやイルカは、人のことを見分けている?」
「生きものにも性格があるの?」
「この中で一番長生きなのはどの魚?」
「同じ種類のサメなのに、どうして背鰭の数が違うの?」
「なんであの魚はずっと口を開けたまま泳いでいるの?」
飼育員の方は、子どもたちの問いを一つひとつ受け止め、ご自身の経験や日々の観察から丁寧に答えてくださいました。
「飼育員さんとの対話の時間がすごく良かったです。大人の視点では出ない質問と、それに対する飼育員さんからの学びの多いお答えが非常にためになりました」
今回、大切にしたかったのは、答えを聞いて終わらないこと。答えを知ると、また水槽を見たくなります。
「それなら、本当にそうなのか見てみよう」
聞くことと、自分の目で確かめることが行き来する中で、子どもたちの水槽を見るまなざしが、少しずつ変わっていきました。
大きな水槽の前に寝袋を広げ、魚たちを眺めながら過ごす夜。
何かをしなければならない時間ではありません。
ただ親子で並んで、水槽をぼんやり眺める。
気になった魚をじっくり観察する。
絵を描く。
「今の見た?」と発見を分かちあう。などなど。
「普段は何かと時間に追われて日々のタスクをこなす事に注力してしまいがちですが、夜の大水槽を子供と一緒にボーッと眺める時間がとても貴重なものに感じられました」
「水槽前で過ごした夜は、自由な時間も多くあり、水槽を眺めながら息子が絵を描いていたこと。このような特別な機会(場所・時間)において、何かすべきことが指定されていない時間というのは、とても貴重で、子ども自身がやりたいことができる、発見がある嬉しい時間でした。」
限られた時間の中で次から次へ展示を移動する、普段の水族館での時間とは違いました。
急がなくていい。
すきなだけ、同じ魚を見ていていい。
眠くなったら、水の音を聞きながら眠ってもいい。
水族館という非日常の場所でありながら、そこで過ごしたのは、とても静かで自由な時間。
その余白があったからこそ、それぞれの子どもの興味が、自然に表に現れていたように思います。
夜から朝まで同じ場所にいると、時間とともに生きものの姿も変わっていきます。
動き方。
いる場所。
仲間との距離。
そこに飼育員の方から聞いたことが重なると、子どもたちの観察はさらに深まります。
開館前の水族館では、イルカたちの健康観察に立ち会いました。
身体の状態を確認し、必要なケアを行う。
前の晩に聞いた「飼育員さんは、生きものの“いつもと違う”をどう見つけるの?」という問いが、目の前の光景とつながっていきます。
「朝のイルカの健康観察時に、目の前でイルカが飛んだことがとても印象的だった様子で、参加していない家族や友達などに、生き生きと話をしていました」
「水槽をずっと眺めてお気に入りの魚ができたようで、帰宅後早速調べ物を始めました。」
知ったことを、自分の目で確かめる。そこでまた発見が生まれ、それを今度は誰かに伝えたくなる。
体験が子どもの中で次の行動へとつながっていることを感じる言葉です。
その場でたくさんの知識を覚えることよりも、自分の中に「もっと知りたい」が残ること。
水族館を出たあとにも、気になった生きものについて調べたり、家族に話したりする。
体験がその場で完結せず、その子の中で続きを始めていく。
それこそが、&Eが大切にしていることの一つです。
今回印象的だったのは、子どもたちだけでなく、保護者の皆さまも一緒になって生きものを見つめていたことです。
「あそこにいるよ」
「さっきと違うね」
「今の見た?」
同じものを見て、驚き、知らなかったことを知り、気になったことを話す。
あるお父さまは、
「息子が観察を楽しんでいたり、質問をしたりと、気になることを話しながら共有できたことがとても貴重な体験でした。また、好奇心でキラキラしている様子を見ることができ、成長を感じる楽しい時間でした。」
と振り返ってくださいました。
また、
「初めて聞く事、観る事への感動や喜びを一緒にわかちあえた瞬間が何度もありました。」
という言葉もありました。
子どもだけが体験するのではなく、大人も同じ場にいて、同じものを見る。
子どもが何を感じているのかを、すぐそばで見る。
そして大人自身も、同じものに驚いたり、不思議に思ったりする。
同じ時間を共有しながら、それぞれが違うものを受け取って帰る。そしてのちに語り合う。
それも、親子で体験することの豊かさなのだと思います。
プログラムを終えた朝、あるお子さまが、
「絵日記が何枚も書けちゃう」と話してくれました。
きっと、印象に残った場面が一つだけではなかったのでしょう。
見たもの。
触れた感触。
聞いた話。
自分で見つけた不思議。
夜の水槽の色。
親子で過ごした時間。
その一つひとつが、子どもたちの記憶になっていきます。
「水槽をずっと眺めてお気に入りの魚ができたようで、帰宅後早速調べ物を始めました。今後のより深い学びに繋げたいと思います。」
「朝のイルカの健康観察時に、目の前でイルカが飛んだことがとても印象的だった様子で、参加していない家族や友達などに、生き生きと話をしていました」
知ったことを、自分の目で確かめる。
そこでまた発見が生まれ、それを今度は誰かに伝えたくなる。
体験が子どもの中で次の行動へとつながっていることを感じる言葉です。
私たちは、子どもたちに覚えて帰ってほしい知識を、あらかじめ決めていたわけではありません。
よく見ること。
不思議に思うこと。
問いかけること。
誰かの話を聞くこと。
そして、もう一度自分の目で確かめてみること。
その先に、「もっと知りたい」が生まれたなら。
体験は、子どもたちの中で、その後も続いていきます。
夜から朝まで、海のいのちのそばで過ごした時間。
この二日間の記憶が、いつかまた新しい「?」に出会うきっかけになってくれたらと思います。