レポート「はじめまして日本のこころ 鞆の浦編 」

REPORT vol.31

レポート「はじめまして日本のこころ 鞆の浦編 」

開催日 : 2025年06月22日(日)

対象年齢 : 親子・7歳〜12歳(小学生)

ナビゲーター : 辰巳満次郎

場所 : 沼名前神社(広島県・鞆の浦)

[ CULTURE ]

豊臣秀吉が愛した能舞台で、“日本のこころ”と出会う旅へ。

2025年6月22日(日)「はじめまして日本のこころ 鞆の浦編 」が開催されました。

穏やかな瀬戸内海に面し、歴史と暮らしが今も静かに息づく港町・鞆の浦。
今回のSAYEGUSA &EXPERIENCEは、この町に佇む沼名前神社(ぬなくまじんじゃ)の能舞台に立ち
舞を奉納しました。日本の伝統文化と“こころ”を学ぶプログラムを開催しました。

この日、6名の親子がふれたのは、日常では味わうことのない“日本のこころ”そのもの。
潮の香り、木々のざわめき、そして神社の静けさが、子どもたちを迎え入れました。

 

心を整え、いざ、室町時代の能舞台へ。

沼名前神社の能舞台は、かつて豊臣秀吉が戦場にも携えていたとされる、唯一現存する移動式能舞台
国の重要文化財にも指定されており、その厳かな空気に子どもたちも自然と背筋が伸びます。

はじめに行うのは、能舞台のお掃除から。
丁寧に雑巾かけをしながら、歴史が刻まれた木の床の感触を、手と足で確かめていく子どもたち。

舞台を清めた後は、神社にお参りをしました。
ナビゲーターの辰巳満次郎さんと同じ所作をなぞることで
自然と「舞台を使わせていただく」という気持ちが生まれていきます。

Photo : Kaito Chiba

礼に始まり、礼に終わる。日本の美意識に触れる。

子どもたちは、国の重要文化財にも指定されている能舞台に上がり、能の基本動作や礼の所作を体験。
手をあげ、足を出す――その一歩ごとに、空気が変わっていくのを感じます。
辰巳満次郎さん、辰巳和磨さんが導く、本物にふれる緊張感と喜びのなかで
子どもたちの表情はぐんぐん変化していきました。

このプログラムでは、ただ“舞う”のではなく、「なぜそうするのか」に耳を澄ませます。
礼の仕方、姿勢、扇の扱い、間の取り方──
すべてに意味があり、静かに“こころ”を整える稽古が始まります。

装束を纏う。能面をつける。

華やかな装束に袖を通し、室町時代から伝わる能面をそっと顔にあてる──
いよいよ、舞台に立つときがやってきました。

かつて豊臣秀吉も使ったかもしれない能面をつけ、子どもたちは「自分ではない誰か」になりながら
自分の中の“感性”を自由に解き放っていきます。

視界の狭さに戸惑いながらも、舞台の中央へと歩を進める姿は
まさに“祈りの舞台”に立つ表現者です。

静寂の中に響く足音、すっと伸びる手、扇の動きに宿る、言葉にならない感情──

“感じる”ことから始まる、表現のかたちを、古の能面と装束が静かに教えてくれました。

奉納舞という、特別な体験。

辰巳さんたちとの昼食をはさみ、いよいよ神前での奉納舞を行います。
神前で舞うという行為は、誰かに見せるためのものではなく、神様への捧げ物。
そして、自分自身の内にある静けさと向き合うような時間であると、辰巳さんは教えてくださいました。

子どもと大人が3組に分かれ、神様に向かって丁寧に舞を捧げる姿。
お稽古だけでは得られない“本物の体験”がここにありました。

奉納後の子どもたちの顔には、どこか誇らしさと落ち着きが宿り
「あの能舞台に立った」という記憶が、しっかりと胸に刻まれたようでした。

鞆の浦という町が育んでくれた“感性”

宮崎駿監督も滞在したという鞆の浦。
今回のプログラムでは、町の散策も忘れられない思い出となりました。
美しい港の風景を味わい、江戸の名残を感じる建物を眺め、石畳の小さな路地を覗く。
その向こうに見える海の静けさに、しばし耳を傾ける。
何気ない出会いの瞬間こそが、子どもたちの五感を開いてくれる「体験」そのものでした。

さいごに

SAYEGUSA &EXPERIENCEが大切にしているのは、「本物にふれること」「心を動かす時間を持つこと」
今回のプログラムは、まさにその価値を体いっぱいに感じられる1日となりました。

静かだけれど、深く心に残る──
そんな“はじめての日本のこころ”との出会いが、子どもたちの未来の感性を支えてくれることを願ってやみません。

大切なお子さまに、本物にふれる時間を。
次の舞台で、お会いできるのを楽しみにしています。

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