レポート「銀座の石の探検隊 2025 」

REPORT vol.30

レポート「銀座の石の探検隊 2025 」

開催日 : 2025年5月18日(日)

対象年齢 : 親子・7歳〜12歳(小学生)

ナビゲーター : 西本昌司

場所 : 銀座5丁目〜8丁目(東京都中央区)

[ NATURE, SCIENCE ]

石は、時をこえて語りかける。
子どもたちは、その声に耳をすます探検隊。

2025年5月18日(日)「銀座の石の探検隊 2025」が開催されました。

昨年の1〜4丁目編に続き、今回は銀座5丁目から8丁目を探検。
老舗から最新の建築までが並ぶこのエリアには、世界各地から集まった美しく貴重な石材が数多く使われており
まさに“石材の博物館”のような街並みです。

日曜日の朝早く、少し眠そうな面持ちで集まった子どもたち。
ナビゲーター・西本先生の軽快な説明が始まると、「銀座の石マップ」を手にすぐに探検モードに切り替わっていきます。

「しゃがむ」「のぞく」「確かめる」──全身で感じる街。
参加者たちは、目線をビルの“床”や“壁”に落とすことで、ふだんとはまったく違う銀座を見つけていました。

Photo : Ko Tuchiya

はじまりは、みゆき通りの路面の石の観察から

「なんか宝探しみたい」「石の国って感じがする」
ひと気の少ない休日の朝の銀座。みゆき通りから探検はスタートしました。

「ここがみゆき通り。昔、天皇陛下がお通りになった“御幸の道”と呼ばれた場所だよ」
そんな説明を聞きながら、足元を見つめる子どもたち。

歩道に敷かれているのは、「ポルフィールド」と呼ばれるアルゼンチン産の流紋岩
一枚一枚、赤や茶、グレーなど微妙に表情が違う石が並びます。戦後の銀座再整備の中で、「ただ歩く道」ではなく「皇居へと続く重要な道」にふさわしいと、この石が選ばれたのだそうです。
ヨーロッパの街路のように美しく、そして長く風景に寄り添うために。

触れて、覗いて、ひざをついて──“石”と向き合う姿

探検が始まると、子どもたちは早速、しゃがみこんで石を観察したり、
表面を手で撫でてみたり、真剣そのもの。
床や壁、柱などに使われている石材の模様や輝きを、じっと見つめています。

「ここ!ガーネットが入ってる!」「なんかキラキラしてる!」「貝が入ってる?」
──こどもたちの目は、普段見過ごしてしまいそうな“街のかけら”にきらきらと向けられていきました。

「この石は、図鑑のここに載っているね!」
持参した本と見比べながら、目の前の石と真剣に向き合う姿も。
まるで“研究者”のような子どもたちの姿に、大人たちが思わず感心してしまうシーンも度々ありました。



いつもとは違った視点でみるブティックや飲食店に大人もワクワク

ご協力をいただいたお店のご厚意で、開店前にゆっくり見学をさせていただきました。

<アルマーニ銀座>

店内の床に使われているアズールマカウバ(ブラジル産クォーツァイト)をはじめ
デザイナーさんのこだわりで、エリアごとに違う美しい床石を観察。
お店の方も見守る中、建築と地学の出会いがそこにありました。

「床に使われた石が、まるで地球の断面図みたい。」
青く波打つ模様に、しゃがみこんで夢中でルーペを向ける子どもたち。
アズールマカウバは青い波模様が美しく、「空みたい」「地球の中身っぽい」など
子どもたちの表現が印象的でした。

 

<ビヤホールライオン 銀座七丁目店

1934年創建の現存最古のビヤホール。
普段は大勢のお客さまで賑わうお店ですが、今回は特別に店内をじっくり見せていただくことが出来ました。
子どもはもちろん大人もワクワク。
創建90年をこえる建築には、日本の石、ドイツの石、火山岩…いろんな国と地層の記憶が重なっていました。

天井の抗火石(新島産流紋岩)、カウンターのドイツ産トラバーチン、外壁のブラジル産朱色の花崗岩など
建物全体がまるで“石の博物館”。
大勢の人をもてなしてきたその証のように真っ黒になった天井を見上げ
壁を触り、石が語る“時の変化”に出会ったひとときでした。

化石との出会い──「知りたい!」「見つけたい!」「なんだろう?」

「見て!これ、アンモナイトじゃない!?」
ビルの外壁に、ぐるりと巻いた化石を見つけた女の子が、思わず指差しながら笑顔に──
街の中に“太古の生きもの”がいるなんて、誰が思うでしょう。

第7セントラルビルのペルリーノロザート(イタリア産石灰岩)からはアンモナイトの化石が発見され
「これって本物?」「ここに巻き貝もいる!」と、大興奮。

また、こゆるぎビルや銀座国際ホテルなどでも
石灰岩の中に隠れた海洋生物の痕跡を次々と見つけていきました。

ブラックギャラクシー(インド産斑れい岩)がキラキラ光る YAMAHAビルの外壁に
自分の姿が映るのをみて、まるで、自分が宇宙を漂っているような空想を味わったり。

石を通じて、目の前のビルが“太古の地球”とつながっている──
そんなスケールの大きな感動が、こどもたちの中にそっと芽生えていたように思います。

知識と気づきの“発表会”

午後の部では、今回の探検で気になった石を、参加者がひとつずつ選んで発表。
それぞれが見つけた小さな発見に、西本先生が笑いを交えた解説を加えてくださり、大盛り上がり。
「なるほど!」の声があちこちから上がって、驚きと納得が交差する、楽しく深い学びの時間となりました。

「石は、ただの石じゃないんだね」
地球の歴史と科学、そして“美しさ”が詰まった石の話を、
子どもたちはじっと、まっすぐな目で聞いていました。

街を歩くと、“世界”が見える。

今回の探検で出会った石は、
イタリア、インド、ブラジル、ノルウェー、ギリシャ、パキスタン、日本各地…
遠い土地の大地の記憶が、銀座という街に、静かに息づいていることを、
子どもたちも大人たちも同じように、肌で、目で、心で感じとっていました。

「銀座の石の探検隊」は、街そのものを教材に変えていく試みです。
五感で感じ、仲間と学び、未来へつながる知識と感性を育てるこのプログラム。
また来年も、私たちたちと一緒に“石”と“地球”を探しにいきましょう。

協力:アルマーニ銀座様、サッポロライオン様、SMBC様 他