
REPORT vol.39
開催日 : 2026年05月24日(日)
対象年齢 : 5歳〜12歳
ナビゲーター : 鈴木 康広(現代アーティスト)
場所 : 銀座の街(東京都中央区)
[ ART ]
2026年5月24日(日)、現代アーティスト・鈴木康広さんをナビゲーターに迎え、
アートプログラム「鈴木康広さんと歩く、見立ての銀ブラ 〜世界の見え方が変わる一日〜」を開催しました。
今回のテーマは「見立て」。
街の中にあるものをじっくり見つめ、
「あ、同じかたちだ」
「これは何かに見える」
と気づくこと。
それは、何かをつくることではなく、世界の見え方が少し変わる体験です。
当日は、子どもたちと保護者の皆さまが、鈴木さんの視点にふれながら、銀座の街の中にひそむさまざまな「見立て」を探しに出かけました。
Photo : Kaito Chiba
プログラムのはじまりは、SAYEGUSA本館での鈴木康広さんによるレクチャー。
幼少期のお話から始まって、ご自身の代表作《ファスナーの船》を紹介しながら、
作品が生まれたきっかけについてもお話しくださいました。
飛行機から海を見下ろしたとき、船の航跡がまるでファスナーで海を開いているように見えたこと。
それは、難しく考えて生まれた発想ではなく、ただ「そう見えた」という感覚から始まったこと。
鈴木さんのお話から伝わってきたのは、見立てとは特別な才能ではなく、
誰もが日常の中で出会うことのできる小さな発見である、ということでした。
さらに、公園の蛇口から出る水がヘビのように見えたお話や、
鈴木さんがいろいろな街の中で見つけたさまざまな「見立ての標本」も紹介されました。
「ただ見る」のではなく、
「ふと違って見えてくる」瞬間を大切にすること。
子どもたちは、鈴木さんのお話に耳を傾けながら、これから銀座の街に出て何を見つけられるのか、
少しずつ目をひらいていくようでした。
レクチャーの後は、いよいよ銀座の街へ。
歩道、ビルの壁、看板、植え込み、路面の模様、ショーウィンドウ。
ふだんなら何気なく通り過ぎてしまうものに、子どもも大人も、じっと目を向けていきます。
「これ、〇〇に見える!」
「こっちから見ると違うよ」
そんな声が、あちらこちらで自然と生まれていました。
今回、参加者が見つけた見立てには、実にさまざまな世界が広がっていました。
形の類似だけでなく、そこから物語や動きが立ち上がるような見立てが数多く生まれました。
一人ひとりの目に映っていた銀座は、同じ街でありながら、まったく違う世界でもありました。
鈴木さんも早速「見立て」に没頭。
何気ない横断歩道の模様も、作家の目を通すと、発見の入口へと変わっていきます。
銀座の街の中で「見立ての標本」を探す時間。
ふだん通り過ぎてしまう細部に、子どもたちの目が向かいます。
今回のプログラムで印象的だったのは、子どもだけでなく、大人も夢中になって街を見つめていたことです。
ある保護者の方は、
「こんなにじっくりと街の細部を見たことがなかった。楽しかった!」
と話してくださいました。
また、姉妹で参加されたご家庭のお母さまからは、後日このようなお声も届きました。
「娘たちがどんな風に何を見ているのかに気づかされ、感慨深く思いましたし、下の子が学校に提出する日記に昨日のことを嬉しそうに書いている様子が、何より嬉しく感じられました」
子どもが何を見ているのか。
どこに面白さを感じているのか。
どんなふうに世界を受け取っているのか。
その一端に、保護者がそっとふれる時間でもありました。
街の中の小さな発見を、レンズ越しに見つめる。
親子で同じものを見ながら、それぞれの視点がひらいていきます。
立ち止まり、しゃがみこみ、のぞいてみる。
視線を少し変えるだけで、街の中に別の世界が見えてきます。
街歩きのあとは、それぞれが見つけた「見立て」を共有しました。
「さて、これは何に見立てたのか、みんなで考えてみましょう!」
鈴木さんのリードで、写真をみながらその見立てを言い当ててみます。
みんなが納得するものもあれば、「そうきたか!」と驚くような見立ても。
見立ては、ただ「何かに見える」で終わるものではありません。
そこに名前をつけることで、一つの発見として立ち上がってきます。
「高級な入れ歯」
「パンダ座りのグリーンキャット behind」
「ヒトツメチョウチン」
「銀座のサメ」
「赤メダル」
「驚いてる人」
同じ街を歩いていても、見つけるものも、名づけ方も、一人ひとり違います。
そこに、それぞれの個性があふれ、その人だけの視点が表れます。
見つけたものに名前をつけて、みんなで共有。
同じ街を歩いても、見えている世界は一人ひとり違います。
参加者が見つけた「見立ての標本」。
形の発見から、物語のように広がる見立てまで、豊かな視点が集まりました。
さて、何に見えますか?
「見立て」を体験して、一度、見え方が少し変わると、
日常の中にも発見が生まれはじめます。
帰り道で。
翌日の学校で。
公園で。
家の中で。
「あ、これも何かに見える」
「さっきの形に似ている」
「この影、おもしろい」
そんな会話が続いていくことこそ、このプログラムの大切な余韻です。
今回の体験を通して、子どもたちは、ものをただ名前で分類するのではなく、
自分の目で見て、自分の言葉で意味を与えていく楽しさに出会いました。
世界は、いつも同じようにそこにあるようでいて、
見方が変わると、まったく違う姿を見せてくれます。
今回の「見立ての銀ブラ」は、銀座の街を歩きながら、
子どもたち一人ひとりの中にある観察する力、想像する力、意味を見つける力が、
自然とひらいていく一日となりました。
鈴木さんの視点から、一枚の作品へ
今後は、参加者の皆さまが見つけた「見立て」をもとに、鈴木康広さんがイラストとして描き起こし、ひとつの作品としてまとめてくださる予定です。
子どもたちと保護者の皆さまが銀座で見つけた小さな発見が、鈴木さんの手によってどのような作品へと広がっていくのか。
その完成も、参加者の皆さまとともに楽しみに待ちたいと思います。