秋晴れの11月の日曜日、伝統文化「落語」をテーマにしたプログラム『お寺で笑おう』が、東京・神谷町の光明寺で開催され、荘厳な本堂に響いた笑い声が、日常を忘れる特別なひとときを作り出しました。今回ナビゲーターを務めたのは、落語家・春風亭昇々さん。子どもも大人も声を上げて笑い合い、肩の力を抜いて楽しむ喜びを共有しました。このプログラムはただ楽しいだけでなく、親子で笑いを通じて感性を磨く学びの場ともなりました。
Photo : Ko Tsuchiya
「笑い」は感性を磨くエネルギー
落語は「笑い」を届けるだけではありません。人間関係や日常生活の機微を情緒豊かに描き出し、聞き手の想像力を刺激する力があります。アニメなど全ての情報が眼に見える映像ではなく、噺家の言葉と表情や仕草だけで、さまざまな情景を想像する体験は、子どもたちの感性を育む貴重な教材とも言えるでしょう。
また、落語には多くの登場人物が現れます。知ったかぶりの和尚さん、おっちょこちょいの裏長屋の住人など、そうした登場人物に感情移入することで、「他者の立場に立つ想像力」や「多様な価値観を理解する心」が自然に育まれるかもしれません。
さらに、落語家が真打ちになるまでにかける14年という長い修行期間からは、「一つのことに真摯に向き合い、努力し続ける姿勢の大切さ」を学べます。この日、間近で見た春風亭昇々さんの姿は、大人も子どもも一生心に残る“生きた教材”だったことでしょう。
即席落語!?オリジナル小噺の創作にチャレンジ
文字通り「座布団から転げる」ほどの大爆笑を誘った、お受験ネタの新作落語『お面接』と古典落語『転失気(てんしき)』の鑑賞を挟み行われたのが、親子をシャッフルしてチームを組んだ「小噺創作ワークショップ」です。春風亭昇々さんのアドバイスのもと、大人と子どもが一緒に頭をひねりながら、駄洒落やオチを考えていきます。子どもたちが柔軟な発想で次々とネタを完成させる一方、大人たちは「笑いを作る難しさ」に悪戦苦闘しつつも、子どもたちの独特の視点に感心しながら創作を進めていきました。
完成した小噺を披露する場面では、子どもたちが堂々と高座にあがり、自分の言葉で観客を笑顔にしました。その姿に大人たちも拍手喝采。昇々さんが「これ、噺家がそのまま使える!」と舌を巻く場面もありました。自分の言葉で人を笑わせるという経験は、子どもたちにとって大きな自信となり、自己肯定感を育む特別な瞬間となったのではないでしょうか。
アンケートでは、多くの保護者が「親子での笑いを共有する素晴らしさ」を挙げていました。
- 「子どもが大人と同じことを笑えると気付き、成長を感じました」
- 「親以外の大人と関わることで、子どもが新しい一面を見せてくれたのが嬉しかった」
- 「皆んなで一緒に創作するのが楽しく、他のお子さんとも交流できて新鮮でした」
- 「落語は親子が一緒に楽しめる日本文化。昔の言葉や文化がわからないとダメという誤解が解けました」
「笑い」は、親子の心を結びつけるだけでなく、子どもの感情表現や創造力を引き出す力も持っています。「また参加したい」という声も多く上がり、次回の開催が待ち遠しいイベントとなりました。
子どもと大人が一緒に体験した「座布団の上での大笑い」は、心を軽やかにし、新鮮な驚きと喜びを届けてくれました。光明寺で過ごしたこの時間が、ご家族の思い出として長く心に残りますように。