レポート「縄文タイムトラベル」Day2-3

REPORT vol.20③

レポート「縄文タイムトラベル」Day2-3

開催日 : 2024年10月12日(土)〜14日(月)

対象年齢 : 親子 / 小学生 (7~12歳)

ナビゲーター : 寒川 一

場所 : 長者ヶ原遺跡(糸魚川市)

[ NATURE, CULTURE ]

10月半ばの秋の爽やかな日差しの中開催された、子どもたちだけの挑戦「縄文タイムトラベル・実践編」。現代の便利さから離れ、自然の恵みに感謝しながら、子どもたちは少しずつ「生きる力」を身につけていきます。大きな発見と成長を重ね、「リスペクト」の意味を知り、友情を育んだ2日目と、最終日である3日目のレポートをお届けします。

Photo : Kaito Chiba




2日目の早朝 – 自然との共生を体感する朝

6時半。まだ眠い目をこすりながら起き出してきた子どもたちは、柴を拾い集め、朝の火熾しに取りかかります。メタルマッチで火を起こす作業も、1日目より少し手慣れたものに見えます。ふっくら炊けたご飯と、特大の鉄板で焼いた目玉焼き、そして温かいお味噌汁。シンプルな朝食ですが、自然の中でみんなと一緒に作った食事の味は格別でした。

縄文人の旅に思いを馳せる – ラベンダービーチでの石拾いと丸木舟体験

朝食を終えた後、一行は翡翠が採れることで有名なラベンダービーチへ向かいました。糸魚川は、縄文時代から翡翠の産地として知られており、学芸員の小池さんによれば、糸魚川の翡翠は装飾品や儀式の宝石として重宝されたそうです。縄文時代の人々は、硬い翡翠を使いこなして勾玉や装飾品を作り、それが日本各地へと広がり、交易や交流の証としても重要視されていました。

浜辺には、蛇紋岩や閃緑岩、チャートなどの様々な石が散らばっており、子どもたちは大人たちに混じって夢中で石拾いを楽しみました。それぞれの色や形が異なる石たちに触れ、自然の多様性と美しさを感じる貴重な体験でした。

昼食には、ナイフを使って自分たちで竹のお箸を削り、地元グルメの笹寿司をいただきました。そして午後は、翡翠職人の山田さんが手作りした丸木舟の体験です。風が強かったため入江の中だけでの航行でしたが、子どもたちは大興奮。縄文時代の人々が、このような小さな舟で遠く青森まで翡翠を運んでいたと聞き、太古の冒険に思いを馳せました。

縄文バーベキューと竪穴住居での焚き火 – 知恵と共生の夜

夕方になると、縄文バーベキューの準備が始まりました。大きな鮭や鹿肉に、海岸で汲んできた海水から作った天然の塩で味付けをして、じっくりと焼き上げます。焼きたての魚や肉の香りが立ち込める中、子どもたちは自分たちで炊いたご飯と一緒に、自然の恵みを心から味わいました。

夕食後は、竪穴住居に戻って焚き火を囲みデザートの焼きバナナをいただきました。竪穴住居は、煙が上手に外へ抜けていく構造になっており、湿気もなくとても快適です。その設計にも縄文人の知恵が詰まっていることに驚きます。




3日目 – 自分の力で火を熾し、炊き上げた最後のご飯

3日目、まだ薄暗い早朝5時半。集合時間よりも1時間も早く、子どもたちが「朝日を見ようと思って」と自ら起き出してきました。それぞれの手には、柴がしっかりと握られています。その姿に寒川さんも「その心意気が嬉しいね〜」と目を細めて見守ります。朝日が昇るまでのひととき、子どもたちはのんびり静かにおしゃべりしたり、森の息吹を感じながら過ごしました。これこそが、まさに「自然との共生」を体感する時間です。

朝日がすっかり顔を出すと、皆、慣れた手つきで火熾しを始めます。寒川さんの手を借りることなく、一人ひとりが自分のかまどで火を熾し、これまでの経験を活かしてご飯を炊き上げていきました。ほんの数日前まで、火のつけ方も知らなかった子どもたちが、今では自信に満ちた表情で手を動かし、力強く燃える火を見つめています。ふっくらと炊きあがったご飯はどれも満点の出来栄え。「最後の朝食」を味わう子どもたちの姿には、3日間を通して仲間と協力し、火を熾しご飯を炊き上げる力を身につけた、確かな成長が感じられます。自分の力で食べ物を得るという達成感が、きっと心に深く刻まれたことでしょう。

森への「お返しタイム」 – 自然とのつながりを実感する

朝食を終えると、「お返しタイム」です。この3日間お世話になった森に、感謝を込めて寝床に使った干し草や残った柴、焚き火のあとの灰を森に返しました。寒川さんから「干し草や灰は、森の栄養になるんだよ」と教わり、子どもたちは自分たちが使ったものが再び森の一部となることに驚き、感慨深い表情を見せていました。「またいつかこの森に戻ってきたとき、この木がもっと大きく育っているのを確かめたい。」と、森の土に干し草や灰を返す子どもたちの姿には、自然とのつながりを感じる静かな敬意があふれていました。

縄文資料館での振り返り – 体験を学びとして深める

プログラムの最後には、学芸員の小池さんの案内で縄文資料館を見学しました。3日間の体験で学んだ「縄文の知恵」や「自然との共生」について、小池さんは展示品を使いながら丁寧に解説してくださいました。実際に火を起こし、丸木舟に乗り、自然の恵みを体験したからこそ、展示品に触れる子どもたちの視線も真剣そのものでした。

名残惜しい別れの時間が近づくと、子どもたちの顔には少し寂しさが見えましたが、どこか満足感も漂っていました。親元を離れ、仲間とともに自然の中で過ごした2泊3日の冒険「縄文タイムトラベル」。この体験を通じて、子どもたちは大きな自信と、新しい視点を手に入れたようです。「またこの森で会いたい」「その時には、もっといろんなことができるようになっていたい」と、子どもたちはそれぞれに新たな目標を胸に、森を後にしました。この3日間で学んだ「自然との共生」や「生きる力」は、これからの人生において、きっとかけがえのない宝物となることでしょう。

来年も同じ時期に開催する予定です。また「縄文タイムトラベル」でお会いしましょう!

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