秋晴れが気持ち良い10月はじめ、銀座の街に新たな視点で挑む「銀座の石の探検隊」が出発しました。地質学者であり、石をこよなく愛する西本昌司先生をナビゲーターに迎え、子どもも大人も一緒に、銀座の隠された「地球の物語」を探る冒険の一日が始まりました。
Photo : Kaito Chiba
都会の真ん中に眠る、地球の歴史をたどる旅
探検隊のスタートは、銀座の象徴ともいえる和光ビルから。四丁目交差点のショーウインドウ前に集まった参加者の表情は、期待に目を輝かせる石や化石が大好きな子どもたちや、「銀座で地球の歴史を探る?」と少し不思議そうな様子の親御さんまで様々でした。確かに、珍しい岩石や化石といえば、山や地層で見つかるものというイメージが強いものです。でも、西本先生は「銀座は宝の山の街なんですよ」と微笑みながら街並みを指さしました。普段何気なく通り過ぎる建物に、悠久の歴史を刻んだ「石」が使われているというのです。
西本先生に導かれ、私たちは街中に潜む貴重な石を次々と発見していきました。「この石は、1億年前のもので、実はここに小さな化石が隠れているんですよ」「このビルの壁に使われている石は、ダビデ像を造ったのと同じ石です」「この石、ところどころ赤いでしょう?これはルビーの原石ですよ」。先生の説明に、参加者たちからは「ええっ!」と驚きの声が何度も上がり、ついつい壁にへばりついたり、床にしゃがみ込んで見入ったりしてしまいます。街歩きがまるで宝探しをしているような気持ちになったのです。
目に見えない「石のストーリー」に気づく瞬間
建物の外壁だけではなく、今回ご協力をいただいた和光や松屋の内装、そして道路の舗装といった銀座の日常風景に、じつは数々の「物語」が隠されています。ベルサイユ宮殿やパルテノン宮殿など、どこか異国の地にある歴史的建造物と、目の前のビルが同じ素材でつながっていると知ると、不思議な親しみが湧いてきます。
あるビルの壁面には、1億年以上前の海洋生物の化石が埋め込まれていました。西本先生はそれを指し示しながら、「毎日ここを通っている人も、この化石の存在には気づいていないでしょうね」と笑顔で語りました。その瞬間、銀座の街がただの都会ではなく、「石の博物館」のように感じられ、街が一気に豊かに見えるようになりました。
西本先生と学ぶ、石の世界の奥深さ
地質学の知識がなくても、西本先生のわかりやすい解説で「石の探検隊」の1日はとても楽しいものになりました。後半の座学では、先生のお話に、子どもたちはもちろん親御さんたちも夢中です。先生が「石には地球の記憶が刻まれているんです。街の中にはたくさんの物語が隠れているから、ぜひ身近な場所で石を探してみてください」と語りかけると、子どもたちはますます目を輝かせていました。
家に帰るときには、銀座の見え方が変わっていた
銀座の石の探検を終えて帰路に着くころ、参加者たちの表情はどこか満たされたものに変わっていました。「日常の風景の中に、これほどまでに壮大な地球の歴史が詰まっているとは思わなかった」という声も聞こえました。これからは街を歩くたびに、何気ないビルの壁や床の石を通して、地球のロマンを感じられるかもしれません。
親子で一緒に学び、新しい発見に満ちた「銀座の石の探検隊」。この貴重な体験は、参加者一人ひとりの心に気づきと新たな視点をもたらしてくれました。日常の中に埋もれている驚きと発見を大切にし、次の探検へとつながっていっていただけたらと思います。来年は5丁目〜8丁目を探検する予定です。どうぞお楽しみに!