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grow with BOOKS vol.5
ドキドキハラハラ、ドキドキワクワクすることには未知と気づきが詰まっています。
楽しいことばかりではなく怖いことや危ないことでもドキドキはやってきます。どうなるのかわからない事態に向き合うことや、見えていることの隠された意味や状況に気づくこと、誰かの挑戦を傍らで見守ること。現実に起きる前に、本はドキドキハラハラの体験や秘密を与えてくれます。
身体は安全です。でも心と頭は覚悟してお読みくださいね。
“新鮮なアイデア、完全なプロット、意外な結末”、日本SFのパイオニアでショートショートの天才、星新一の世界を説明するのは本の帯のこのコピーがぴったり。超美人女性ロボットバーテンダー「ボッコちゃん」を始め、わずかなページの中に含まれる驚きとドキドキハラハラの展開と結末、多少の残酷さと皮肉とブラック・ユーモアは、大人への入り口のようでもあります。星新一にハマって読書が好きになったかつての子どもたちの後を継ぐ今の子たちへ。
ある社会やコミュニティに属する人々をタイポロジー的に撮り続ける写真家シャルル・フレジェ。豊かな自然と季節性をもった日本に存在する、全国58箇所のお祭りの八百万の神様や鬼たち。フレジェは彼らを祭りの文脈から離し、「YOKAI/妖怪」として即物的に撮っていきます。土地の自然や文化と地続きな姿でもあります。なまはげのように、子どもが時に恐れ、時に憧れた怖さとユーモアが裏表に同居する神様たちの記録。
西洋絵画は時にとても残酷なシーンが描かれます。また残酷に見えない絵が実は非常に恐ろしいものであることもあります。ドガが描いた「エトワール」のような、怖さと無縁に見える絵に潜む歴史と社会の闇から、ルドンやゴヤのように見るからにドキドキする作品まで。美術館や絵画に興味がないという子どもも、まるでマンガのキャラクターや設定のような背景や物語を知ると絵を見る目が変わります。絵を全く違うものに変えるストーリーの力。
なぜ大人はこんなにも時間に追われているのだろう。子どもはそんなことを考えているかもしれません。大人たちに時間の節約を勧め、忙しく働かせながら、節約した時間を盗んでいた時間泥棒たち。モモは彼らから時間を取り戻そうと戦います。本当の豊かさとは何か、むしろ大人になって読んだ時に一層感じることかもしれませんが、子どもの目線でこの物語を感じ、楽しむことはその時期にしかできません。モモと同じ目線、戦う側でドキドキを共有し、自分たちの自由を取り戻す経験をぜひしてほしい。
飛行機が海に墜落し、近くの無人島にたどり着いた子どもたちが生き残りをかけてサバイブしていきます。『十五少年漂流記』と同じ漂流記ものですが、楳図かずおのマンガ『漂流教室』のような人間の本性としての凶暴性や支配欲、何が人を不安にし惹きつけるのかが描かれていきます。危機的状況で、小さな子どもの集団はどうサバイブするのか。いつの子どもたちも自分たちの小さな社会をサバイブしています。そのことから目をそらさないために。
かつて子どもだったみなさんは、どんな本を読んできましたか。読書はどんな存在でしたか。
圧倒的な好奇心と想像力で世界に挑み、気付き、驚き、喜び、恐れることを繰り返す子どもの日々にあって、“ホンモノの体験”と呼べる本、読書とは何か。子どもが感じる直感を実感へと繋げ、実感が新たなアイディアとなり、次なる直感を呼ぶ。科学の世界から想像上の世界まであらゆる事象を扱う本は、そうした子どもの成長の傍らにあって、時に先生のような、時にお守りのような、時に話し相手のような、時に未来そのもののような存在として、読んでもらえるのを今か今かと待っています。感じ、考え、遊ぶ子どもたちの行動や経験を切り口に、日々の体験と読書体験が相互に関係し合い、互いの豊かさを引き出していく本をご紹介いたします。
Director:Hiroyuki Yamaguchi (good and son)
ブックディレクター/編集者
good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年から16年まで選書集団BACHに所属。17年にgood and sonを設立し、オフィスやショップから、レストラン、病院、個人邸まで様々な場のブックディレクションを手掛けている。企業やブランド、広告のクリエイティブディレクションなども手がけているほか、さまざまなメディアで編集、執筆、企画などを行っている。