&E AT-HOME
grow with BOOKS vol.3
夢は現実とはちがう仕組みでものごとが動いています。眠りのなかで見る夢なら、空を飛ぶことも動物がしゃべることも物語の主人公になることもあるかもしれません。イマココではない、違う環境や未来としての夢なら、憧れや妄想が現実になることや現実逃避的なものかもしれません。どちらにしても、ここではないもうひとつの可能性を思い描くということでは同じであり、その想像力と変えていこうする力は最も大切なことのひとつです。夢をみること、夢にみること、夢でみること、夢が叶うこと、夢のようなこと。
朝に夕に働かなくてはいけない、いじめられっこの少年ジョバンニが星空を眺めていると、突然宇宙を走る銀河鉄道に乗っていました。そこには親友カンパネルラも一緒に乗っています。厳しい現実から逃れるかのように突如入った異世界は、北十字から南十字へとめぐる旅であり、現実の世界で友人を救うために生命を落としたカンパネルラを送る物語でもあります。見上げた空に託す、子どもの純粋な気持ち、友情、不安、希望。
1400万人の人口を抱える東京。渋谷はいつだってお祭りのような人出です。この写真集は東京の見知ったあの場所あの場所を撮っているにも関わらず無人なのです。奇跡のように静まり返った東京の風景は、パンデミックで世界が終わったようにも、宇宙人に襲撃を受けたSFの世界のようにも見えます。日常の地続きなのに想像もできない現実は、夢のような不思議な空気が漂っています。子どもと一緒に現実の街とぜひ見比べてみてください。
急げ急げと走るうさぎを追いかけて不思議なあべこべの世界に入り込んでしまった少女アリス。大きくなったり、小さくなったりする体、チェシャ猫や狂ったお茶会とそのメンバー、どんどん処刑してしまう女王などヘンテコたちがわんさか登場します。大人から子どもに向けた偉そうな教えなどない、言葉あそびやナンセンスを駆使した夢の世界の物語(実際アリスも最後に眠りからさめます)。
ファッション写真家ティム・ウォーカーの写真には、いつもストーリーとファンタジーとユーモアが絶妙にブレンドされています。どの写真にもセンス・オブ・ワンダーが溢れているといっていいかもしれません。ちょっと現実離れしたモードの世界には、別世界の論理で動く物語世界のストーリーとファンタジーがふさわしいのかもしれません。自らをストーリーテラーと名乗る写真集は、ファッション、そしてファッション写真が夢の世界を実現する方法だと教えてくれます。
女性はこれまで、こうあるべきという時代の空気や文化、規範に押し込められて、役割を与えられてきました。王子様を待っているのが女性とされ、世界を率いて、世界を変え、世界の歴史に名を残すのは男性だとされてきました。この本に登場する100人の女性は違います。みな反骨心を持って自ら動き、世界を変えてきた人たちです。夢を現実にしてきた先輩たちの物語は、夢見る女の子の、世界に不満を持つ女の子の背中を確実に押してくれるでしょう。
かつて子どもだったみなさんは、どんな本を読んできましたか。読書はどんな存在でしたか。
圧倒的な好奇心と想像力で世界に挑み、気付き、驚き、喜び、恐れることを繰り返す子どもの日々にあって、“ホンモノの体験”と呼べる本、読書とは何か。子どもが感じる直感を実感へと繋げ、実感が新たなアイディアとなり、次なる直感を呼ぶ。科学の世界から想像上の世界まであらゆる事象を扱う本は、そうした子どもの成長の傍らにあって、時に先生のような、時にお守りのような、時に話し相手のような、時に未来そのもののような存在として、読んでもらえるのを今か今かと待っています。
感じ、考え、遊ぶ子どもたちの行動や経験を切り口に、日々の体験と読書体験が相互に関係し合い、互いの豊かさを引き出していく本をご紹介いたします。
Director:Hiroyuki Yamaguchi (good and son)
ブックディレクター/編集者
good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年から16年まで選書集団BACHに所属。17年にgood and sonを設立し、オフィスやショップから、レストラン、病院、個人邸まで様々な場のブックディレクションを手掛けている。企業やブランド、広告のクリエイティブディレクションなども手がけているほか、さまざまなメディアで編集、執筆、企画などを行っている。