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grow with BOOKS vol.2
目に見える世界の美しさを私たちがすくい取りきれていないときがあります。人間は視覚優位の動物だと言われます。子どもは新鮮な目で世界を見つめます。初めて見るものに驚き、時に戸惑い、時に喜び、興奮します。好きなものを見つけると、もう止まりません。他の人からすると「なんでそれが好きなの?」というものもたくさんあります。好きな子どもにとっては好きの一歩先、知らずに本を開いた人にとっては思わず釘付けになってしまう。そんな目をみはる多様な美しい世界。
昆虫をうつくしいと思うか、苦手、無理と思うかは分かれることでしょう。ただ、子どもは苦手であっても知りたいという好奇心で気にはなってしまうもの。そんな子にはこの本です。なにせ著者自身もともと虫嫌いなのです。昆虫たちはきれいに足が折り込まれ、鮮やかに光る背中がグラフィカルに並べられています。生きて観察するのではわからなかった、虫を虫としてだけではない視点から観察する魅力と方法がすばらしいのです。
200体の脊椎動物の骨格を写した写真集。印刷の仕上がりのよさもあり、まるでCGかと思うほど美しく整った姿の骨たちが並びます。骨の変化から動物の進化を追う構成になっていて、文章は子どもには難しいけれど、動物好きな子には初めて見る動物のあられもない姿に驚くだろうし、恐竜好きなら博物館並の興奮があるかも。画を描く子には最高の資料。いつもは見えていない姿こそ、美しさの秘密なのです。
都市と自然の関わりをテーマにしてきた写真家畠山直哉が、キャリア初期から撮ってきた石灰石の採石場や工場。タイトルの通り、石灰岩のBLAST=爆発、発破の瞬間を収めた本書。爆破はその前後で風景を別のものに変えてしまいます。そのまさに変わろうとする瞬間をとどめた写真。動きたくてムズムズしているようにも見える石の緊張感に見入ってしまいます。ヒーローが敵と戦う爆発シーンも思わせ、ヒーロー好きな子は違う興奮を味わえるかもしれません。
自然はなんて不思議で、うつくしい仕組みでできているんだろうと思うことがあります。雪の結晶もそのひとつ。六角形からはじまり複雑に形作られていく結晶は、「大分類8種類、中分類39種類、小分類121種類」に分けられるといいます。数ミリのものは肉眼でも見れるけれど、誰しも雪が降っている時にひとつひとつの結晶は見ていません。雪だるまが複雑なディティールの小さな結晶の集まりと考えると、まったく違う凄みと存在感を感じます。
ネイチャーフォトグラファー高砂淳二が、ハワイでメディスン・マン(ヒーラー)に出会い教えられた、見た者にとって最高の祝福であると語り継がれる、月の光に照らされた夜の虹「ナイトレインボー」。その虹を撮り始めて以来、撮り続けた世界中の虹の写真を集めたのが本書。空気中に広がった水滴が太陽光を反射することで生まれる虹という偶然の現象を見つけるためには、上を見上げていなくてはいけません。虹づくしのこの本は、そうした気持ちも視線も上げてくれる。雨の間に写真集を見て、雨後は外へと飛び出し、空を見上げたい。
かつて子どもだったみなさんは、どんな本を読んできましたか。読書はどんな存在でしたか。
圧倒的な好奇心と想像力で世界に挑み、気付き、驚き、喜び、恐れることを繰り返す子どもの日々にあって、“ホンモノの体験”と呼べる本、読書とは何か。子どもが感じる直感を実感へと繋げ、実感が新たなアイディアとなり、次なる直感を呼ぶ。科学の世界から想像上の世界まであらゆる事象を扱う本は、そうした子どもの成長の傍らにあって、時に先生のような、時にお守りのような、時に話し相手のような、時に未来そのもののような存在として、読んでもらえるのを今か今かと待っています。
感じ、考え、遊ぶ子どもたちの行動や経験を切り口に、日々の体験と読書体験が相互に関係し合い、互いの豊かさを引き出していく本をご紹介いたします。
Director:Hiroyuki Yamaguchi (good and son)
ブックディレクター/編集者
good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年から16年まで選書集団BACHに所属。17年にgood and sonを設立し、オフィスやショップから、レストラン、病院、個人邸まで様々な場のブックディレクションを手掛けている。企業やブランド、広告のクリエイティブディレクションなども手がけているほか、さまざまなメディアで編集、執筆、企画などを行っている。