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grow with BOOKS vol.1
ことばを話せない赤ちゃんは、周りをよく見て、よく聞いています。赤ちゃんに語りかけながら、行動や感情を呼び起こすような交歓の遊び。子どもは真似をしながら、徐々に共通の言葉や身振り、意味やリズムを覚え、自分に心地いい遊びやコミュニケーションへとつなげていきます。遊び、真似し、一緒に楽しいを見つけていく。声に出してうれしくなる読み聞かせの原点のような本たち。
1967年に赤ちゃんの“愛読書”として誕生し、世代を超えて親子のはじめての読み聞かせ絵本としても読まれてきた、発行部数700万部超の国民的絵本。「いないいない ばあ」の声ともに動物が顔を見せる本のままに、読み聞かせる親も顔を隠しては出してを繰り返し、我が子の笑顔を必死に誘い続けてきました。表情と声を連動させるそのコミュニケーションは、赤ちゃんの好奇心と安心、喜びを支えていきます。
いないいないばあは、繰り返すことによる予想と期待、裏切りと正解のよろこびがあります。何かが倒れる姿が擬態語とともに描かれる『どてっ』も、同じ。表紙のたけのこは倒れる時、どんな音を立てるだろう。パンは? アスパラは? ぬいぐるみは?とページをめくるたびに読み聞かせをしている親も子も、予想が当たったり、外れたり、そうかな?と思ったりします。本を閉じれば、身の回りにあるどんなものでも子どもと一緒に遊ぶことができます。
「ぱぱぺ ぱぷぽぴ ぽぱぷぽぴ ぱぺぽ ぷぺ?」「ぴぴぴー ぴぴーぷ ぷーぺー ぴぷぺぺぺ ぽぱぱぽぽぴぺぱ ぺぴぺぴぺぺ!」さて、なんと言っているのでしょう。半濁音、いわゆる「ぱ行」の音の跳ねるような楽しさとなんとも気の抜けた調子です。大人たち基準の意味に回収されない赤ちゃん時代の謎語の発話はおそろしく魅力的ですが、本書と同じように意味だけのやりとりじゃない、音としての言葉のたのしさを共有できます。
「どんないろがすき(あか)♪」でおなじみの歌を絵本化した本書。絵本を読むというよりも、歌に絵がついてきたかのように読んでいくことができます。「どんないろがすき?」「あお!」というコール・アンド・レスポンス。気づけはその色の色鉛筆やクレヨンを持っているかもしれません。もしくは絵を描きながらその色の歌を歌っているかもしれません。歌っても、読んでも、描いてもいい。目と耳と手で読む絵本。
赤ちゃんがする動きは、まだ名前のないものがたくさんあります。成長するに従って、少しずつ誰もがわかる動き、同じ動詞で理解できる動きを覚え、その動きで世界との距離を試し、測り、繰り返し、自分の動きにしていきます。見開きにたくさん描かれた人々の様子に動詞を当てはめ、行為の図鑑にした本書。「〇〇ちゃんが何をしていたね」「これはできるかな?」と誰かがしている行為を見て、自分の動きにしていく。読んで、動く絵本です。
かつて子どもだったみなさんは、どんな本を読んできましたか。読書はどんな存在でしたか。
圧倒的な好奇心と想像力で世界に挑み、気付き、驚き、喜び、恐れることを繰り返す子どもの日々にあって、“ホンモノの体験”と呼べる本、読書とは何か。子どもが感じる直感を実感へと繋げ、実感が新たなアイディアとなり、次なる直感を呼ぶ。科学の世界から想像上の世界まであらゆる事象を扱う本は、そうした子どもの成長の傍らにあって、時に先生のような、時にお守りのような、時に話し相手のような、時に未来そのもののような存在として、読んでもらえるのを今か今かと待っています。
感じ、考え、遊ぶ子どもたちの行動や経験を切り口に、日々の体験と読書体験が相互に関係し合い、互いの豊かさを引き出していく本をご紹介いたします。
Director:Hiroyuki Yamaguchi (good and son)
ブックディレクター/編集者
good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年から16年まで選書集団BACHに所属。17年にgood and sonを設立し、オフィスやショップから、レストラン、病院、個人邸まで様々な場のブックディレクションを手掛けている。企業やブランド、広告のクリエイティブディレクションなども手がけているほか、さまざまなメディアで編集、執筆、企画などを行っている。